2010年2月11日木曜日

聴衆の誕生

聴衆の誕生―ポスト・モダン時代の音楽文化
先日読了した「マーラーと世紀末ウィーン」に続く渡辺裕の著作.

音楽の「聴取のあり方」を歴史的にたどることから音楽それ自体の変遷も射程に収めた本.
面白くて一気に読み終えた.

絶対音楽の確立と崩壊が,コンサートホールという社会的装置をともなう「聴取のあり方」を変えていくという主旨が本文の軸となるわけだが,マーラーの音響的解釈や,スティーヴ・ライヒの説明などあらためて教わるところがあった.

反面,ベートーヴェンの図像学的解釈により「楽聖」の創出を描いた箇所など,イメージの形成にくわえて後世の作曲家がどのようなイメージを受容/増幅させていったかも知りたかった.
初版から7年後の補遺では,図式的な構想に基づく本文の叙述を自己批判していたが,歴史的なバランスをとることが切れ味を鈍くしている.

今月末締切の報告書の執筆があるのでしばらく他の本は読めないが,この人の他の本もひととおり読むつもり.

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