2009年8月24日月曜日

最近見た映画

前回アップした映画と実際に見た順番は逆だが.

セロ弾きのゴーシュ

監督:高畑勲
音楽:間宮芳生
1982年

中学生の頃にみたアニメ版ゴーシュを久しぶりに見ることができた.
あらためて見ると,それまでは気がつかずにただぼんやりと見ていた箇所の意味がわかるようになってきて,知識がそれなりについたことを実感した.

ねこ=感情を込めた演奏,かっこう=音程,たぬき=リズム,ネズミ=旋律といった音楽の諸要素がちりばめられている.
ただ,賢治のこの作品も,一見簡単そうにみえて読み方の一定しない作品なのかもしれない.

大学生の時に訪ねた賢治博物館には,彼が実際に使っていたチェロが展示されているようなのだが,記憶に無い.
SP盤もそれなりに持っていたようで,作品中に使われる独特なオノマトペイと音楽との関わり等,興味を持った.

2009年8月22日土曜日

最近見た映画

上海の伯爵夫人

監督:ジェームズ・アイヴォリー
主演:レイフ・ファインズ,ナターシャ・リチャードソン他
2005年上映

日の名残のカズオ・イシグロによる原作を映画化.
製作のマーチャント&アイヴォリーは,E.M.フォースターの一連の作品を映画化しており,学生時代からこのコンビの作品は楽しみにしてきた.

フォースターにも,カズオ・イシグロにも共通するモチーフが作品を貫いていて,それは古い世界と新たな世界の接触だ.
フォースターの場合,それは異文化との接触(インドへの道,眺めのいい部屋)や階級差(ハワーズ・エンド,モーリス)を通して描かれることが多く,古い世界はしばしば崩壊する世界として描かれる.

カズオ・イシグロの日の名残も,アンソニー・ホプキンス演じる執事は,古い世界が絶対的なものと信じることにより,個人的な幸せを逃し,仕えている主人の悲劇を目の当たりにする.
最終的に彼に崩壊した古い世界を擬似的に提供するのは,新大陸アメリカからの成上りなのだ.

上海の伯爵夫人も,過去の古い世界にしがみつく伯爵夫人の義理の両親が戯画的に描かれており,主人公の元外交官も失明したことで過去の世界に沈殿し,生きている.
彼らの古い世界を文字通り暴力的に断ち切ったのが,日本軍の上海侵攻となる.

真田広之演じるマツダが,古い世界を断ち切る上で重要な役割を演じているのだが,いまいちキャラクターが掘り下げられていなかった.
カズオ・イシグロの場合,設定を限定した上で登場人物の性格や真理描写を濃密に描くほうが得意なのかもしれない.

2009年8月21日金曜日

野球を見に行った

ソフトバンク対西武のチケットが当選したので,19日は久々にドームへ足を運んだ.
先発が藤岡と石井一久.

ソフトバンクと西武の関係はちと複雑で,もともとライオンズは福岡を拠点とするチームで,西武に買収されるまでは西鉄の黄金時代を経て,太平洋クラブライオンズ,クラウンライターライオンズとして平和台球場を拠点に親しまれてきた.

記憶に残るのは太平洋からクラウンライターに移った頃で,東尾のピッチングは今でも覚えている.

その後,球団は所沢に移り,空白の後南海がダイエーに買収されて福岡を拠点とするようになり今日に至る.
初期の西武はなんとなく今の楽天を思い起こさせるようで,他球団を半分解雇されたようなベテラン(野村も最後の現役だったし)と,まだまだ安定しない若手との奇妙な混合体だった.
なぜかしらんが,弱小チームの好きなこちらとしては,初めてファンクラブに入ったチームとして中学生になる頃まで応援し続けていたものだ.

試合は,初回におかわり君の目の覚めるような弾丸ホームランで,たまげたなぁ.

松中に対して投球する石井一久.

送信者 日々是好日


ヤクルトの頃から石井一久は好きだったので,どっちを応援したものか,とまどう.

さて,西武リードでむかえた7回.
準備はいいかな.

送信者 日々是好日


てなことで,ジェット風船が舞う.

送信者 日々是好日


試合は結局ソフトバンクの負け.
負けるべくして負けた試合で,今後が思いやられる試合だった.

2009年8月19日水曜日

盆休みなにもない

採点作業に書評の校正.
盆休みもあったもんではないなぁ.

レンズ関係ではLithagon関連でトラブル続きの海外購入.

カメラでは,OHに出したペンFが予想外の重症で,内部をそっくり入れ替えるはめに.
中古で購入するのとかわらない代金を払うことになった.

懸賞は,ちょっと前に角ハイボールセットが当たる.
明日も抽選で当たったソフトバンクの試合を見に行く.
帰宅前には今日届いた抽選で当選した食事券3千円分で食って帰る予定.

グールドの再放送があり,前回見逃した回もあったのでありがたい.
そんなとこかな.

2009年8月9日日曜日

どたばたの一週間

水曜日から始まった夏期集中のため,この一週間はへとへとになった.

テレビによる今年の戦争関連の特集はかなりひどい.
沖縄の地上戦と核関係の特集はそれなりにあるのだが,アジア諸国への加害の歴史(右翼なら自虐史観と呼ぶ)を正面から扱う番組が今のところ見当たらない.

従軍慰安婦,南京大虐殺といった,戦後50年を迎える際にそれなりに取り上げられたテーマは,この10年の右傾化にともなう小泉,安倍や河村,中山といった極めて保守的な政治家の台頭により,ほとんど取り上げられることがなくなってしまった.
戦後責任の議論をどのように社会問題として取り上げることができるか,これからの重要な問題だ.

オバマがプラハで核廃絶演説をしたことが今年の核関係番組の背景を成しているのだとすれば,アメリカでのリベラル政権の成立が日本国内の保守的動向を促す皮肉な結果になっていると言わざるを得ないだろう.
日本では核の被害だけを強調することでアジア諸国への加害の歴史を忘れることができ,同時に核開発を進める北朝鮮に対する強硬姿勢を正統化できる.

オバマさまさまってとこか.

2009年8月1日土曜日

訃報二つ

訃報:マース・カニングハムさん 90歳=米現代舞踊の第一人者

 AFP通信によると、米舞踊家で振付師のマース・カニングハムさんが26日、老衰のためニューヨークの自宅で死去した。90歳。

 1919年、米ワシントン州生まれ。米モダンダンスの育ての親マーサ・グラハム(91年に96歳で死去)に師事し、グラハム舞踊団のソリストとして活躍。53年に自分の舞踊団を結成し、前衛的な振り付けで現代舞踊の第一人者となった。米音楽家ジョン・ケージら前衛芸術家とのコラボレーションで知られる。90年代には日本のファッションデザイナー川久保玲さんと組んだ制作活動も行った。晩年は車椅子の生活だったが、今年4月に長編の新作を発表したばかりだった。【ニューヨーク支局、写真はAP】

毎日新聞 2009年7月28日 東京朝刊

訃報:米谷美久さん 76歳=元オリンパス光学工業常務
 ◇「オリンパスペン」開発

 米谷美久さん 76歳(まいたに・よしひさ=元オリンパス光学工業<現オリンパス>常務)30日、呼吸不全のため死去。葬儀は8月2日午後0時半、東京都立川市柏町1の26の4の立川会館白峯殿。喪主は妻敬子(けいこ)さん。

 フィルムの1コマを2分割して撮影できるハーフサイズの35ミリカメラ「オリンパスペン」を1959年に開発。小型・軽量で安価なコンパクトカメラのさきがけとなった。「ミスターカメラ」と呼ばれた。同シリーズは17機種が発売され、全世界で計1700万台を販売した。92年2月に国際写真マーケティング協会(PMA)の殿堂入りに選ばれた。

毎日新聞 2009年7月31日 東京朝刊
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(以上新聞記事から)

カニングハムは京都で2度,そのうち同じツアーの松江での講演を入れて3度舞台を見たことがある.
身体から意味をはぎとり,身体そのものの動きを追求した点ではモダン・バレエの系譜の中心に位置する存在だった.

ただ,身体を機械として突き詰めていったフォーサイスとは異なり,東洋哲学への親和性や,チュードアやケージとのコラボレーションからは,むしろ身体の動き/静止という二項対立そのものを表現(止揚)しようとしていたようにも思える.
カニングハムの舞台がいつも静寂につつまれていた印象があるのは,そのことと関係があるのだろう.
舞台で見た彼の動きが太極拳のように見えたことが今でも想いだされる.

米谷氏はペンの生みの親として後世に名を残した.
カメラのデザインが特定の人物と結びついて語られることなんて皆無に近いモダン・プロダクトの世界では,異例だ.
35ミリ規格の生みの親とも言われるライカのバルナックぐらいだろう.

そのライカをいつも持ち歩いていた米谷氏.
写真を撮ることが好きであったことをご自身がいつも述べていた.
工学技術の知識がそこに加わり,オリンパスへの入社(ニコンやキャノンではない),高度経済成長といった複数の要因が整ってはじめてペンが生まれたのだろう.
横並びの製品しか生み出してこない日本の産業界の傾向からいっても,極めて独創的だった.

東京にペンを持って出かける時は,なぜか街で米谷氏と遭遇するのではないか,と夢想することがあった.
米谷氏は外出の際には,サインを求められた時のことを想定して,ボディにサインの出来るダイヤモンド(だったか?)を埋め込んだペンを持ち歩いていたらしい.

PEN E-P1が発売されて間もない逝去に,なにか言いようのない符号を感じてしまう.
このデジカメは,一度予約したものの,店頭でいじってみて,結局はキャンセルしてしまった.
オリジナルのPEN F,FTがやはりデザイン的にも素晴らしいのと,ファインダーをのぞいてピント合わせをする作業が楽しいことを再確認したからだ.
キャンセルで浮いた予算は,一部中古レンズへ,一部手元のペンのOH代となって消えてしまった.
それでいいのだ.