NHKで二つの番組が放送された.
ひとつが,新しい番組でJAPANデビューとかいうきわめて軽薄な番組名のもの.
台湾の植民地統治について前半で簡単に触れた後,日本の統治が台湾人に及ぼした影響についても生存者をたどり描いていた.
韓国と対照的に,台湾の植民地統治は肯定的に語られる場合があり,今でも一部保守政治家や学者の間で植民地支配の正当性を匂わしながら議論されることがある(例:某東京都知事).
番組は台湾で生まれ育ち,日本式教育の中で同化志向を強く内面化した台湾の人たちをとりあげており,台北一中の同窓会を中心にとりあげていた.
これらの人たちは,当時の台湾人の間では現地エリートとしてそのキャリアを築き上げるはずだった.
だが,彼らのひとりに日本統治時代をどう思うかという趣旨の質問をしたときの表情は,忘れられないものだった.
表情をゆがめて差別の存在に言及するこの人たちを見ると,彼らが生きた時代の苦難に想いをめぐらさずにはいられなかった.
日本語で語るあの人たちは,自分の考えを展開するためにいまだに日本語で考え,語るほうが十全に表現できるという.
国民党支配に比べれば日本統治下はよかった,といった趣旨の発言が時として日本の台湾統治を正当化するものとして引かれることもあるが,敗戦により植民地を放棄し,戦後補償をまともにおこなってこなかった国として,事後処理をせずに過去を美化する欺瞞をあらためて反省すべきときではないか.
一部,時間帯が重なったが,ETV特集で放送された朝鮮人シベリア強制連行の被害者も悲惨な生涯を送っている.
戦争に駆り出され,敗戦にともない強制労働に従事,やっとの思い出祖国に戻ろうとしたときには南北分断状況.
韓国に戻った人たちは北のスパイとみなされ,人生を否定され続けてきた.
東アジアに日本の打ちたてようとした秩序は,多くの人々の生涯を左右したことを日本の社会はもっと知るべきだろう.
日本の政治家や司法にとっての戦後補償は,こうした人たちが鬼籍に入っていくことをただ傍観するだけのものだとしたら,あまりにも志の低い考えだと感じざるを得ない.
4 件のコメント:
残念ながら、こういう実態「も」ありますね。
Nスペに「李登輝友の会」が抗議声明
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090410/biz0904102039021-n1.htm
あんま驚かないけどなぁ.
なんたって政治家が番組放映に先立ち事前検閲してしまうような事例のある国だから.
確かに驚きはしませんが、なにか、こう辛いですね。
辛いっちゃぁ,辛いわね.
でもこっちなんか,自己反省のなき自国の賛美をしてなにがそんなに嬉しいのかね,と不思議でしょうがない.
自慰と一緒ってことかな.
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