年末が近づき,しばらく本を読み通していなかったことに焦りを覚えて,比較的最後まで読み通しやすい新書を二冊.
「奈良の寺」奈良文化財研究所編,岩波新書
「丸山真男」苅部直,岩波新書
この間奈良を訪ねたときに立ち寄った元興寺と春日大社についての記述だけでなく,興福寺や東大寺といった超有名所から西隆寺,大安寺など,あまり観光客が足を伸ばさない寺についても扱っている.
研究所の所員が,おそらくそれぞれの専門を背景に,その寺に関する歴史,建築物や発掘成果を踏まえた説明をしているので,たんなるガイドブックを読むよりも面白い.
研究所が法人化されてまもない頃に出された本のようで,独法化に伴ういろいろな心配が背後に潜んでいることを推察してしまった.
丸山についての新書は,今頃の感もなきにしもあらず.
没後,雨後の筍の如く出版された書籍や論文は,そのほとんどが丸山の著作を読んだことがある読者層を自明としていた.
この新書は,丸山の生涯をたどりつつ,時代時代の代表的な著作のエッセンスを説明している.
出版社の方針もあるだろうが,丸山を読んだことのない読者層が前提とされて書かれたものだ.
自然と作為という初期のスキームから,古層への転換を踏まえながらも,晩年に顕著となる異質な他者との接触という視点を強調しているように感じた.
読みやすく,一気に読了したのだが,やはり丸山自身の著作を読むのが一番エキサイトするな,とあらためて思った次第.
これら新書に比べてなかなか読み進まないのが,みすずから翻訳の出た「春の祭典」.
英米系社会史の著作は,凝集度が低くて,だらだらと書き連ねているようなものが多く,この本もそういった類の一冊なのか,判断しかねているところだ.
それにしても,第一次世界大戦前後の美術・音楽・舞踊の面白いことといったらありゃしない.
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