2008年12月7日日曜日

雑感:二つのドラマに想うこと

男装の麗人 川島芳子の生涯(テレビ朝日)

新たな芳子像を提示するとのことだったが,芳子が自分探しに終始していてかえって時代描写がおろそかになってしまっていた.
他の登場人物も描き方が中途半端で,2時間以上の時間を要したのにかなり不満が残った.
脚本が悪かったのか,演出が悪かったのか,あるいはその双方か.
役者については特に言うことなし.

最後の戦犯(NHK)

私は貝になりたいの映画化もあり,BC級戦犯に対する関心が高まっている.
この傾向で危惧すべきは,BC級戦犯の裁判がずさんであり,結局はA級戦犯を裁いた東京裁判も含めて,連合国による勝者の裁きであり,日本の大義に誤りはなかったという結論に至ることがあることだ.

このドラマでは,裁判での上官の責任逃れや戦前の警察とまったく変らない戦後の警察の拷問による人権蹂躙体質も描かれていたり,敗戦による人々の戦前との断絶や連続がいい意味でも悪い意味でも浮かび上がる内容になっていた.
さらに,巣鴨プリズンで同室となる戦犯に在日朝鮮人を設定することで,日本とアメリカに翻弄され続けている忘れられた存在を付け加えることも忘れずにいたことも評価すべきだろう.

役者もよかった.
少ないせりふで演じる分,表情や目の演技力が試されるが,このドラマでは主役をはじめとする出演者の演技も十分だった.
あえて苦言を呈せば,主人公の妹役の俳優さんの今後の研鑽を期待したい.

加藤さんの訃報に接してから,戦争の描き方がこれからの世代に及ぼす影響を強く意識せざるを得ない.
BC級戦犯の再考が,日本の戦争犯罪を一般大衆のレベルで理解するよい契機になればいいのだが.

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