2010年3月28日日曜日

ミュンヘン・フィル福岡公演

ティーレマンが常任指揮者を務めるミュンヘン・フィルが福岡まで来たので聴きに行った.
曲目はブルックナーの8番.
ブルックナーの交響曲のなかで最高傑作と評され,多くの演奏が残されている.

指揮者のティーレマンは,1997年初頭にベルリンのドイチェオパーでマイスタージンガーを聴いて以来だから13年振り.
まだ駆け出しの頃の姿が脳裏に焼きついていたのだが,久しぶりにステージで見る彼のお腹がえらく立派になっていた.
未来の巨匠ともてはやされているが,体格では早巨匠クラスと言えよう.

今日のコンサートに備えて,以前FMで放送された同じ曲目をベルリンフィルで振った演奏をしばらく聴いていたのだが,今日の演奏はそれと比べると随分違っていた.
ひと言で言えば,若い,元気なブルックナー.

ベルリンフィルとの演奏がこじんまりとまとまっていたのに対し,今日のミュンヘン・フィルとの演奏はテンポこそさほど揺らさないものの,細かいフレージングを随分いじったり,管楽器のソロの部分でゆったりと歌わせたりと,楽章のなかで展開されるいくつかの動機にあわせてたっぷりと表情をつけていたのが印象的だった.

結局,終楽章で頂点に到達するように指揮を構成するのではなく,歌うパートはひたすらオケを鳴らしていくので,それぞれの楽章でも重量感はたっぷり味わえたはず.

細かいことを言えば,抑えて演奏する箇所があまりなく,アンサンブルが少し乱れたり,第3楽章ではホルンが飛び出していたりと,ちょっとと思う点もあったのだが,重量級の音のシャワーを浴び続ける経験も久しぶりで,それなりの充実感もあったのは事実.

前回この曲を生で聴いたのは,2006年かその翌年にコンセルトヘボウをハイティンクが振った時だったので,久しぶりだった.
ハイティンクの演奏は,録音され,CDになったが,枯淡の境地に達しつつあるブルックナーだった.

ミュンヘン・フィルとのブルックナーにさかのぼれば,1994年にチェリビダッケと来日したとき以来になる.
大阪のシンフォニーホールで4番を振った演奏は,チェリのキャリアの中でも名演として伝えられており,演奏の印象を言葉にすることが今でも難しい.
緻密で,小節ごとに断片が継起しては消えていく,絵巻物のような印象を抱いた.
彼の指揮した8番にリスボンでのライヴ盤があり,名演として名高いが(実際名演),あの時の4番を想起させる演奏だ.

それにしても,チェリビダッケとミュンヘン・フィルとの演奏を想いだしながら本日の演奏を聴いていたのだが,ティーレマンもオケも随分とリラックスしていた演奏だった.
チェリの頃は,楽団員が緊張して演奏にのぞむ様子がこちらにも伝わっていたのだが,ティーレマンとのコンビでは気さくな関係に見えた.

その気さくさが今日の演奏に反映していたのかどうか,気にはなるところだ.

送信者 GR Digital

終演後の様子.

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