2009年8月1日土曜日

訃報二つ

訃報:マース・カニングハムさん 90歳=米現代舞踊の第一人者

 AFP通信によると、米舞踊家で振付師のマース・カニングハムさんが26日、老衰のためニューヨークの自宅で死去した。90歳。

 1919年、米ワシントン州生まれ。米モダンダンスの育ての親マーサ・グラハム(91年に96歳で死去)に師事し、グラハム舞踊団のソリストとして活躍。53年に自分の舞踊団を結成し、前衛的な振り付けで現代舞踊の第一人者となった。米音楽家ジョン・ケージら前衛芸術家とのコラボレーションで知られる。90年代には日本のファッションデザイナー川久保玲さんと組んだ制作活動も行った。晩年は車椅子の生活だったが、今年4月に長編の新作を発表したばかりだった。【ニューヨーク支局、写真はAP】

毎日新聞 2009年7月28日 東京朝刊

訃報:米谷美久さん 76歳=元オリンパス光学工業常務
 ◇「オリンパスペン」開発

 米谷美久さん 76歳(まいたに・よしひさ=元オリンパス光学工業<現オリンパス>常務)30日、呼吸不全のため死去。葬儀は8月2日午後0時半、東京都立川市柏町1の26の4の立川会館白峯殿。喪主は妻敬子(けいこ)さん。

 フィルムの1コマを2分割して撮影できるハーフサイズの35ミリカメラ「オリンパスペン」を1959年に開発。小型・軽量で安価なコンパクトカメラのさきがけとなった。「ミスターカメラ」と呼ばれた。同シリーズは17機種が発売され、全世界で計1700万台を販売した。92年2月に国際写真マーケティング協会(PMA)の殿堂入りに選ばれた。

毎日新聞 2009年7月31日 東京朝刊
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(以上新聞記事から)

カニングハムは京都で2度,そのうち同じツアーの松江での講演を入れて3度舞台を見たことがある.
身体から意味をはぎとり,身体そのものの動きを追求した点ではモダン・バレエの系譜の中心に位置する存在だった.

ただ,身体を機械として突き詰めていったフォーサイスとは異なり,東洋哲学への親和性や,チュードアやケージとのコラボレーションからは,むしろ身体の動き/静止という二項対立そのものを表現(止揚)しようとしていたようにも思える.
カニングハムの舞台がいつも静寂につつまれていた印象があるのは,そのことと関係があるのだろう.
舞台で見た彼の動きが太極拳のように見えたことが今でも想いだされる.

米谷氏はペンの生みの親として後世に名を残した.
カメラのデザインが特定の人物と結びついて語られることなんて皆無に近いモダン・プロダクトの世界では,異例だ.
35ミリ規格の生みの親とも言われるライカのバルナックぐらいだろう.

そのライカをいつも持ち歩いていた米谷氏.
写真を撮ることが好きであったことをご自身がいつも述べていた.
工学技術の知識がそこに加わり,オリンパスへの入社(ニコンやキャノンではない),高度経済成長といった複数の要因が整ってはじめてペンが生まれたのだろう.
横並びの製品しか生み出してこない日本の産業界の傾向からいっても,極めて独創的だった.

東京にペンを持って出かける時は,なぜか街で米谷氏と遭遇するのではないか,と夢想することがあった.
米谷氏は外出の際には,サインを求められた時のことを想定して,ボディにサインの出来るダイヤモンド(だったか?)を埋め込んだペンを持ち歩いていたらしい.

PEN E-P1が発売されて間もない逝去に,なにか言いようのない符号を感じてしまう.
このデジカメは,一度予約したものの,店頭でいじってみて,結局はキャンセルしてしまった.
オリジナルのPEN F,FTがやはりデザイン的にも素晴らしいのと,ファインダーをのぞいてピント合わせをする作業が楽しいことを再確認したからだ.
キャンセルで浮いた予算は,一部中古レンズへ,一部手元のペンのOH代となって消えてしまった.
それでいいのだ.

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