2009年9月21日月曜日

パルタ・チャタジーの講演

19日,20日とアジア文化芸術賞のために福岡に来たパルタ・チャタジーの講演会に出かけてきた.
19日は福岡大学での研究者を中心とした講演で,20日は一般向けの講演会.

驚いたのは,チャタジーの話す英語が明晰で,とても分かりやすいものだったこと.
頭のいい人だと感じたのは,質問に対して的確に解答していくことだった.

送信者 GR Digital


19日は福大の歴史系の先生が来ていたため,サバルタンという概念と歴史学の民衆史との違いを問いただす質問があった.
また,抵抗する民衆と受け止められがちなサバルタンが,状況によっては非常に従属的で,エゴに満ちた集団となりうるのではないかと言う質問もあった.

これらの質問に対する回答を聞いて感じたのだが,サバルタン概念は理論的なレベルと実際の歴史叙述のレベルでわけたほうがよいのではないか.
理論的にはサバルタンは,階級によって規定されるのではなく,単なる民衆でもない,といったように,ネガティヴにしか規定されない.
実証的な研究においては,特定の地域の特定の時代の特定の集団を叙述するときに,サバルタンという概念を用いようが用いまいが関係ないのではないだろうか.

チャタジーは,サバルタンが抵抗と服従という二つの契機をはらんだ集団であり,権力関係のなかで規定される集団と答え,ジャワの現地エリートがオランダ人に対しては従属する地位にあり,現地住民に対しては支配の関係にあるサバルタンだとこちらの質問に答えていた.

他の質問があり,回答をさらに深めることができなかったのだが,サバルタン=民衆という図式で理解していた人にとって,この回答はそのイメージを崩し,さらなる議論を引き起こすものではないだろうか.

サバルタンを関係性により規定してしまうなら,社会のあらゆる集団にも適用できることになってしまう.
エリート集団もそれを詳細に検討すれば,従属と支配の契機は存在するわけだから,この点をチャタジーはどう説明するのか,メールでも送ろうかと考えている.

20日は,会場で3年振りに知り合いと遭遇.
夜の飲み会に便乗させてもらうことになった.
知的にも満足して,久々に会った人との会話も楽しんで,充実した一日となった.

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