2010年2月28日日曜日

地震と音楽

最近エアチェック頻度があがり,日曜午後からのサンデークラシックワイドと現代の音楽は欠かさず聴いている.
しかし,今日の放送はチリ地震にともなう津波に関する報道のため大幅に番組が変更された.
地震にともない番組の一部,あるいは全てが変更されるのは,今月二度目だ.

前回7日はギーレンの放送だったのだが,今日は佐渡のカルメンが放送予定だった.
こちらにとって佐渡と地震は偶然なのだが地震と結びついた思い出がある.

阪神大震災当日,京大オケが彼を指揮者に迎えて京都会館でマーラーの9番を演奏予定だった.
その少し前,クラウディオ・アバド率いるベルリン・フィルがシンフォニーホールで同じ曲を振った会場にも佐渡氏の姿が見えていた.
予定されている自分の演奏の参考に来ていたのだろう.

京大オケのチケットを購入していたこちらとしては,下宿のある神戸へ戻るにも戻れず,かといってテレビを見ていても被災者を支援できるはずもなく,いっそのこと演奏も中止だろうと思いつつ京都会館に向かってみた.

会場に着くと,不意打ちに似た感覚を覚えたのだが,予定通り演奏会が開催されるとのことだった.
ステージに立った佐渡氏は,京大オケのメンバーにも被災者がおり,フルメンバーでの演奏がかなわないことや,演奏の始まる夕方までに明らかになった被災地での甚大な被害に追悼の意味を込め演奏を行うといった短いスピーチをおこない,指揮台に立った.

彼の演奏は,その後直接聴いていない.

ここしばらく地震報道が多く,番組に変更が生じるのはいたしかたないだろう.

金曜日はリクオのライヴもあったのだが,彼のライヴではいつも楽しく音楽を聴くことができる.
久々のメジャーからのアルバムがカバー集で,意外な選曲で楽しめた.

2010年2月22日月曜日

週末のんべんだらり

だんだん更新が面倒になってきたなぁ.

金曜は東南アジア学会の地区例会に出る.
シンガポールのドキュメンタリー映画に関する報告.
将来的には映像資料を扱えるようになりたいので,いろいろな点で参考になった.
後の懇親会はヤボ用のためにパス.

研究会に向かう途中でもiPhoneで聴いていたのだが,吉田秀和の「名曲のたのしみ」が1月の視聴室でカール・フィリップ・エマヌエル・バッハを取り上げており,面白い.
バッハから古典派への橋渡しを演じていて,楽曲の変遷に時代の刻印をうかがえる.

少し前にブリュッヘンのコンサートでもC.P.E.バッハの「シンフォニア」がハイドンとモーツァルトとともに演奏されていた.
この曲などモーツァルトを予感させる曲で,良いプログラムだった.

もう少しこの作曲家の曲を聴いてみたいが,他に欲しいものもあるし,困るなぁ.

2010年2月16日火曜日

デ・ワールトの薔薇の騎士とその他諸々

14日はNHK-FMでエド・デ・ワールトが今年の1月9日にメトロポリタン・オペラを指揮した薔薇の騎士が放送された.
ヴァレンタインにあわせた組み合わせだとしたら,粋な計らいだ.
先週のギーレンのときのように災害もなくつつがなく終了した.

デ・ワールトはオランダ留学中,Radio Filharmonisch Orkestの常任だったので,よく聴いた.
その後2001年だったかに訪ねた香港で,香港のオーケストラが彼を常任に招くというポスターを見て,いい人選だと思っていた.
日本ではデュトワからアシュケナージと,訳の分からぬバトンタッチがあったので,力量のある指揮者を見抜く見識が日本にはないのかと,ほとほとガッカリした記憶がある.

デ・ワールトは昨年ようやくN響の定期に出演したのだが,その職人気質の堅実な演奏に好印象を抱いた人も多かったようだ(無論,その逆もあるわけだが).
FMで放送された演奏会の解説者などは,名誉客演指揮者などの冠をあげて,定期的に演奏してもらうことを提案していたが,個人的にはまったく同感である.

さて,メトを振った薔薇の騎士だが,この曲の隠れた名盤を録音している指揮者だけあって,演奏の質は高かった.
元帥婦人をルネ・フレミングというのは,正直やや気品の点で足りないものを感じるのだが,現役の歌手の中では,フェリシティ・ロットに次いでベストの選択だろう.
ゾフィーをクリスティーネ・シェーファーというのが,個人的には以外だったが,総じて歌手陣,特に女性歌手陣は合格点だったのではないだろうか.

なにはともあれ,このオペラにはあまりにも多くの思い出がついてまわるので,なんとも言いがたい感情がこみ上げてくる.

その他,ここ数日に聴いた演奏では,N響の定期演奏会でのビシュコフのマーラー5番に注目していたのだが,演奏の鍵となるトランペットが最初から最後まで不安定でダメだった.

少し前に聴いたエッシェンバッハがウィーンフィルを振ったときの演奏もトランペットが派手に音をはずしていたのでN響をあまり責めては酷なのかもしれないが,元来音を外すことが多い曲と分かっていれば当然事前の準備も入念にするはずなのに,やはりダメだったなぁ.

あとは,チョン・ミュンフンが東京フィルハーモニーを振ったブラームスの3番と4番も14日に放送されたので聴いてみた.
ちょっと濃い目のブラームスで,枯淡の境地という演奏からは遠く,チョン・ミュンフンまだまだエネルギッシュですな.

ブラームスは40代に1番と2番を書いて,50代で3番と4番を書いたと解説の吉松隆が言っていた.
いい話だ.
自分も40代と50代でそれぞれ大きな仕事を二つしてみようと密かに誓った次第.

2010年2月14日日曜日

箱崎探訪

所用があり九大箱崎キャンパスへ出かける.

着陸のために真上を通る飛行機が相変わらずの迫力.

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理学部向いの敷地に立っていた空の祠と小さな石碑.

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これはいったいなんなのだろうか.

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「安永六・・・等雲妙香・・・」と刻まれているが,よくわからない.

閉鎖されたいくつかの建物.

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重厚な造りで,有効活用できないものだろうか.
解体するにはもったいない.

工学部図書館はちょっとアールデコ調の正面で,これも閉鎖されている.

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キャンパスを出てすぐの民家の軒先に珍しい鬼瓦風鍾馗さんを発見.
博多の街では鍾馗さんを見かけることなく,かわりに猿のお面が玄関先に掲げてあるのをよく目にする.

さらに進むと「車僧観音」という文字も消えかかった小さなお堂が.

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14世紀頃に破れ車で気の向くまま諸国を遍歴した僧のお堂らしい.
観音が中に安置されているかと思い中を見ると布をかけた物体しか確認できなかった.

さらに進むと「武内大神」の鳥居が.

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鳥居の左手には平べったい石を祀っているお堂があり,説明書き「高麗犬地蔵由来」とあった.
もともとこの辺り(明治期にはまだ松の生える浜)にあった小高い盛り土の地蔵堂があったらしく,西鉄の開通に伴う移転工事の際に平べったい石に頭蓋骨が発見されたとのことで,これを祀ったのがはじめらしい.

面白い話だが,もう少し詳しい情報を得ることができないものか.

小さな境内の右手には丸い石がちょこんと置かれている.

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「水虫地蔵」とは,傑作である.

この近辺にはこのような丸い形の石が祀られていて,他にもこの鳥居の道を挟んだ向いに見ることができる.

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さらに近くの駐車場の奥にも夫婦石なのか,一組の石が祀られている.

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丸い石は,もしかするとかつて海岸線が迫っていたこのあたりでよく見ることができたかもしれない.
なにがなにを意味しているのかは,今後の調査次第,かな.

2010年2月11日木曜日

聴衆の誕生

聴衆の誕生―ポスト・モダン時代の音楽文化
先日読了した「マーラーと世紀末ウィーン」に続く渡辺裕の著作.

音楽の「聴取のあり方」を歴史的にたどることから音楽それ自体の変遷も射程に収めた本.
面白くて一気に読み終えた.

絶対音楽の確立と崩壊が,コンサートホールという社会的装置をともなう「聴取のあり方」を変えていくという主旨が本文の軸となるわけだが,マーラーの音響的解釈や,スティーヴ・ライヒの説明などあらためて教わるところがあった.

反面,ベートーヴェンの図像学的解釈により「楽聖」の創出を描いた箇所など,イメージの形成にくわえて後世の作曲家がどのようなイメージを受容/増幅させていったかも知りたかった.
初版から7年後の補遺では,図式的な構想に基づく本文の叙述を自己批判していたが,歴史的なバランスをとることが切れ味を鈍くしている.

今月末締切の報告書の執筆があるのでしばらく他の本は読めないが,この人の他の本もひととおり読むつもり.

2010年2月8日月曜日

ギーレンの芸術

最近写真ものんびり撮る余裕がないので,もっぱら自宅作業が中心だ.

キャプチャーでの音源の取り込み,編集,iTunesへの転送と曲名情報の編集.
結構時間がかかる作業で,本を読む時間がなくなってしまう.

最近はFMのエアチェックも直接パソコンに取り込んでいるので,ますます時間がなくなる.
とはいえ,考えれば安上がりな趣味で,加えて身銭を切って買うことのない楽曲を聴くよい機会にもなるし,一石二鳥と言えるかもしれない.

今日の午後は,ギーレンのコンサートをたっぷり3時間放送するとのことで,楽しみに録音を始めた.
ギーレンは,まだ学部生の頃からIntercordレーベルで発売されていたディスクをたまたま買って以来,つきあいの長い指揮者だ.
このCD,グレーを基調にした渋いデザインで気に入ってたが,途中でヘンスラーのレーベルに買収されたようで,今手に入るギーレンのディスクは正直ジャケットのデザインとしてはイマイチだ.

さて,ギーレンは生でもコンセルトヘボウで一度コンサートを聴き,アムステルダムでもベリオだったっけか,オペラの指揮で聴いているが,なんといってもザルツブルグで聴いたルルは,タイトル・ロールを歌うクリスティーネ・シェーファーのすばらしい歌と演技に加え,ルイーズ・ブルックスのパンドラの箱をベースにした演出とあいまって,いまだに鮮烈な印象を思い出すことができる.

これがDVD化されたら音楽界にとってすばらしい遺産となるだろうに.

肝心の放送だが,午後3時過ぎに石垣島近海で発生した地震の緊急津波警報の放送が入り中断されてしまった.
昔チェリビダッケのコンサートをエアチェックしていたときにも,くるみ割人形の途中で地震の放送が割り込んできたことがあったが,正直何とかならないかと思ってしまう.

ラジオ放送で緊急度の高い情報を伝達するなら,FMよりAMで流すべきではないだろうか.
FMを聴いている人が直接体感する地震なら,多分その人はラジオをAMに変えるかテレビをつける可能性が高いと思う.
電波の届く距離も短いFMであえて緊急放送を30分以上流すことに合理性がどれだけあるのか,疑問だなぁ.

幸い,中断した分の曲は後日放送されるとのことで,ひとまず安心.
昔は中断したままで終わっていたことを考えると,少しはリスナーのことも考慮してくれるようになったみたいだ.
とはいえ,再放送の時に外出なんてことがありえそうで,コワイ.
ギーレンのブルックナーなので,聞き逃せないのだが,再放送がいつのことになるのやら.

2010年2月3日水曜日

忙しいなぁ

年明けから早ひと月が過ぎてしまった.
年度末まで忙しいなぁ.

今晩はNHK-FMでエマールのリサイタルを放送していた.
ドビュッシーを起点に現代音楽で構成されたプログラムで,教育的配慮に満ちている.
早く時間をとってゆっくりと聴きかえしたいものだ.

天気も悪いので写真も撮れないし,もう少し読書に集中しようか.